文章には、書き手の考えが反映されます。
イライラした人が書けば、攻撃的な内容になります。心穏やかな人が書けば、平和的な内容になります。
たとえば、電車の中で赤ちゃんが泣いているのを見たとき、
「泣くな。赤ちゃんを公共交通機関に乗せるな。泣いたら親があやせ。いったん降りろ」
と書く人もいれば、
「どうしたって泣くときもある。子どもに不寛容ような社会であってはいけない」
と書く人もいます。
「赤ちゃんが電車内で泣いている」という現象はひとつです。その現象に意味を持たせているのは、書き手の価値観です。どの言葉を選んで、どのように表現して、どのような考えを披露するのか……。それは百人百様です。
フランスの博物学者、ジョルジュ=ルイ・ルクレール・ド・ビュフォンは、次の言葉を残しています。
「文は人なり」
文章には、書き手の思想や人柄があらわれている。文章を見れば、書き手の人となりが判断できる、という意味です。
元朝日新聞記者の辰濃和男さんも『文章のみがき方』(岩波書店)の中で「結局は『内面』の深さがものをいうのではないでしょうか」と指摘しています。
しっかり自分と向き合うことができている人は、少しくらい表現が稚拙でも、読者の心を打つことができます。
反対に、テクニックをどれだけ磨いても、生き方がブレていれば、文章もブレてしまいます。
テクニックやロジックは大切です。しかしそれだけでは、人を惹きつける文章は書けない気がします。良い文章を書くには、自分自身の内面を磨くことも大切です。